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【3368】ads.FM「三重の映画に恋をして」〜VOL.47「半世界」(2019年) 事務局 田中忍
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 当委員会会長の田中忍が、ads.FMで三重県ゆかりの映画について話をしています。
 コーナータイトルは「三重の映画に恋をして」、略して「みえこい」です。
 第47回目は次のとおり4月25日(日)の放送です。本放送は、インターネット
でもお聴きいただくことができます。 
 ads.FMホームページ http://www.catv-ads.jp/fm/ 
 ただし、田中会長は電話出演のためインターネットでお聴きいただいた場合、声が聞き取れません。ご了承ください。

放送日時:4月25日(日)午前11時20分から午前11時36分(予定)まで
放送局:コミュニティFM『ads.FM』
番組名:weekend mix
ナビゲーター:北山ヒロトさん
紹介映画:「半世界」(阪本順治監督、2019年)
        ある地方における、40歳間近の3人の男性の友情物語です。
       メインロケ地は南伊勢町です。炭焼き小屋や漁港をはじめ、豊かな自然を
       活かした風景が存分に観れます。 

なお、放送内容は、放送後にこのページに掲載します。
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投稿日 2021/4/23 (Fri) 21:37:27
更新日 2021/4/23 (Fri) 21:38:26
 

【3369】Re:ads.FM「三重の映画に恋をして」〜VOL.47「半世界」(2019年) 事務局 田中忍
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【放送内容】

「半世界」という言葉は、日本の戦前を代表する写真家である小石清氏が、1938年に従軍カメラマンとして中国にわたり、その後、1940年に発表した写真集の名前です。この写真集は反戦思想を感じさせるもので、阪本監督は10数年ほど前に小石氏の写真展に出かけ、「半世界」というタイトルに関心をもったことがきっかけです。

本作は、とある地方で、炭焼きをしている職人のもとに、中学時代からの友人である元自衛隊員が、突然、帰省してきます。そして、その町には、この二人の友人である中古自動車販売業を営む男性も住んでいて、改めて三人の男性の交流が始まります。炭焼き職人を稲垣吾郎、元自衛隊員を長谷川博己、中古自動車販売業を渋川清彦が演じていました。三人で酒を酌み交わす際、元自衛隊員の瑛介が、炭焼き職人の紘や中古自動車販売業の光彦に、「お前たちは世間のことを知っていても世界を知らないだろう」と言います。瑛介がそのように言い出したのは、自衛隊を辞めた理由と関係があって、自分の命の危険と向き合ったり部下の自殺に遭遇したり、自分の心が折れる経験をしてきたからなのです。いわば、「この町だけの世界を知っていても、大きな世界のことはわからないだろう」という意味を込めての発言である事がわかってきます。しかし、瑛介も中学時代からの友人である紘や光彦のことを全て知っているのでなく、紘が炭焼き職人になった理由、紘の中学生の息子がいじめられているのに、息子にうまく手を差し伸べられない紘自身のもどかしさを知ることになります。光彦も、中古自動車販売業がうまくいかず、詐欺まがいの事件に巻き込まれることをたまたま知り、結果、瑛介が、紘の息子を助けたり、中古自動車販売業の詐欺事件を懲らしめたりすることになります。

本作の公式ホームページに、この映画は「人生半ばにさしかかった時、残りの人生をどう生きるか」という誰もが通るある地点の葛藤、家族や友人との絆、新しい希望を描くとあります。おそらく、瑛介が帰省してこなかったら、紘も光彦も、昨日と同じ生活を営んでいたでしょう。改めて始まった三人の交流により、三人のそれぞれが描かれます。ネタバレになりますが、このうち一人は、ある事情で自分が描いていた残りの人生の通りにいかないというエピソードがあるのですが、別の人物により、自分ができないことを全うしてもらうという希望が託されています。半世界の半は、自分がこれまで見えてきた世界は自分中心の半分の世界で、やがて、残りの世界も見えてくるという意味に解釈できますが、私、この「半」という字はユニークだなと、今回、この映画を観て思いました。

映画とは直接関係はありませんが、半分と半分を足すとひとつになりますね。例えば、夫婦は二人そろうから夫婦と言うのです。そして、この夫婦から誕生した子どもの側から言うと、この二人は両親、と呼ばれますね。二人いるから夫婦、両親と呼ばれるのであって、一人ではそのような呼び方はされません。それから、半という字をつくりに使った漢字もたくさんあります。半に人偏を書くと「伴う」。これも一人でなく、一緒にいてくれる誰かがいるのです。そして、半と言う字に糸偏で絆。これは、誰かと誰かが結びつくという意味ですね。このようなことを考えると、自分だけだと半分だけど、誰かといるとひとつになれる。誰かと交流すると、もうひとつの世界が見えてくる。そしてその先には新しい希望が感じられる。ということをこの映画では描きたかったのではないかと思います。

本作は39歳の男性3名のお話が中心ですが、池脇千鶴さんがとてもいいのです。紘の奥さん役で登場します。本作は三重県の南伊勢町がメインロケ地ですが、津市の百貨店・松菱でも撮影があって、私、その時、撮影応援に出かけていたのです。池脇さんが、百貨店で買い物するシーンでして、当時、彼女は30代半ばでしたが、とてもオーラがありましてね。気品のある女性だなと感じました。実は「半世界」ではどのような役柄を演じられるのか、その時は知りませんでしたが、映画を観てビックリ!買い物のシーンで感じた美しさとか気品とは、むしろ正反対の生活の匂いがする母親であり妻役を映画では演じられていて、なんて演技の上手な女優さんなのだろうと驚きました。そして本作での演技が認められ、ヨコハマ映画祭、毎日映画コンクール、キネマ旬報などで助演女優賞を受賞されています。彼女が演じた女性像も、最初はわからない「半世界」がありますが、やがて、子どものために、また炭焼きの家業のために夫を支え奔走する気丈な姿が見えてきて、小さい体でありながら、家族を大きな愛情で包む姿が感じられます。「半世界」からは離れますが、池脇さんは、伊賀市出身の呉美保監督の映画2本にも出演しています。2014年の「そこのみにて光輝く」では、貧しい家庭を支えるために、やむなく自分の身体を売るという女性を演じています。翌年には「きみはいい子」という映画で、子どもへの愛情を注げないお母さんの友人役で出演しています。どちらの作品も難しい役柄ですが、実力派俳優として優秀な演技が評価されています。

さて本作は南伊勢町がメインロケ地となりましたが、その経緯は、この映画では炭焼き小屋が撮影場所として必要なため、映画スタッフは全国の小屋の情報を集められました。その中で、やっと、南伊勢町にあるマルモ製炭所という場所に行きついたとの事です。それほど、この場所を気に入られました。「半世界」の撮影支援をした伊勢志摩フィルムコミッションの方にうかがうと、大抵は、撮影のオファーの際、数々の映画製作に携わってきたフリーの制作担当の方から第一報が入り、撮影場所のイメージをお聞きしてから、写真で確認してもらったり実際に見てもらったりします。その結果、複数の候補があったりする場合もあるのですが、「半世界」の場合は、長年、阪本監督の作品に関わられている制作担当の方から2018年2月のクランクインの10ケ月程前に相談があり、とにかく南伊勢町の素晴らしいロケーションの中で撮影したいという思いが強くてね。最初の関りから他の作品とは違うなあと感じられたようです。撮影場所のイメージも監督がイメージする場所等を完璧に理解してみえるなあと感心されたとのことです。

南伊勢町は、私もよく行きますが、山も海も美しく、農村・漁村の風景もある、いい場所なのです。映画では、これらがすべて使われています。例えば町のイメージとかけ離れている高いビルが近くにあったりすると、カメラに映りこむ場所を苦労しながら、シーンを繋ぎ、ひとつの町に見せるよう駆使するわけですね。でも南伊勢町では、そのような苦労が要らない。被写体の向こうに何が映っても構わないと感じさせるほど、まるごと南伊勢町が映画に収められています。たとえば、木を切り、山で一休みする稲垣吾郎さんが、海を見ているシーンもちゃんと撮影できるわけです。しかも山から海が見下ろせるわけで、海に近い山で木を切っているのだなという想像が働きます。実際、そういう場所で、五ケ所湾を囲むように、あちらこちらで撮影がされています。

その中でも炭焼き小屋は、マルモ製炭所さんの全面協力により撮影が進められ、とても助かりましたと、伊勢志摩フィルムコミッションさんは言われていました。マルモ製炭所さんは非常に親切な方で、場所の提供のみならず、稲垣さんへの炭焼きへの指導もしていただきました。稲垣さん、とてもうまく炭焼きをされていましてね。炭を焼いているとカランカランと言う音が聞こえるのですね。炭を窯場から出す時もカラカラリンという音を立てて、木が真っ赤な炎に包まれた炭に生まれ変わった場面を、カラカラリンという音とともに鮮やかに映し出しています。

それから、紘の家と瑛介の家の撮影に、田舎らしいお家を借りられたのだなと映画を観て嬉しくなりました。長年雨風をしのいできた家のたたずまいというのでしょうか、木造の建物の古さが感じられ、長年の生活の匂いが伝わる住居でした。撮影のため、新しく建設されたものでなく、人が実際に住まわれていたお家なので、こちらも本物ならではの映像が作ることができたわけです。また光彦が経営する中古自動車販売屋ですが、実は、自動車修理工場を飾り変えました。たくさん車が置かれていますが、これは伊勢志摩フィルムコミッションから声をかけ、役場の方や知人が、ご自身の車を乗り入れ並べてくれました。車のエキストラですね(笑)。すると、本当に、車を買いにきたお客さんが見えたり、取引先が「あれ?昨日まで工場だったのに、中古自動車販売するようになったの?」と言われ、工場のオーナーとお話をしたいと探そうとする方もみえました。これらの撮影は南伊勢町の方々の協力があってこそです。伐採地のロケ地選定は、南伊勢町役場の方々にご協力いただいたとのことです。

その他、県内ロケは津市の百貨店・松菱の他に松阪の老舗、おいしい松阪牛をすき焼きで食べられる和田金も撮影に使われていました。松菱は買い物客の往来や陳列された商品、和田金では広い畳敷きの広間など、本物ならではの空気感が味わえました。南伊勢町の地方とは異なり、商売でにぎわう街の風景としての対比が感じられます。また池脇さんは、伊勢中川行きの近鉄電車にも乗られていて、とてもローカル色が感じられ、嬉しくなりました。ただ、稲垣さんや長谷川さんはじめ登場人物が標準語を話されていました。これには賛否両論ありますが、伊勢弁を話して欲しかったという声をよく耳にします。私も、伊勢弁を話して欲しかったと思う一人です。映像が三重県内とわかるのに登場人物皆の言葉が標準語だと、違和感があるからです。

本作は、三重県の映画館では伊勢の進富座のみで、2019年2月15日から1か月余り上映され、たくさんの方々に観ていただきました。今ですと、Netflixで観ることもできます。是非、映画の舞台となった南伊勢町をご覧ください。そして、またお出かけください。

*本日、音楽の紹介はありません。また、時間の関係でお話しできなかった内容も上記に含まれています。


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投稿日 2021/4/25 (Sun) 17:47:39
更新日 2021/4/25 (Sun) 17:47:39
 


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